※以下の文章は、オリが代表に残ることを発表した日につばさ様よりメールにて戴きました。
つばさ様、掲載許可ありがとうございます!(すず)

 私はワールドカップ2002まで、サッカーに興味がなかった。私はよく北海道に旅行していので、札幌ドームへのなつかしさから、そのドームで行われたドイツ対サウジアラビアの試合をテレビで観た。それがドイツ代表への関心の始まりだった。最初から最後まで手を抜かずにサウジアラビアに攻め続けるドイツに何か感じるものがあり、それから、ドイツ代表の試合を中心に観た。サウジアラビア戦ではゴールキーバーの存在が分からなかったが、ドイツ代表の試合を観ていくうちに、Olliの存在がだんだん自分の中で大きくなっていったのを今でも覚えている。アイルランド戦では、最後の最後にアイルランドが1点を入れ、同点として試合が終了したとき、Olliの怒りを感じた。次のカメルーン戦ではドイツ代表が10人と不利になりながらも、皆で必死になってプレイした姿が気に入り、私は、ドイツファンになった。今、思い出してもそのときのドイツ代表を純粋に応援していた自分が懐かしい…。

 ユーロ2004の時も、地上波ではドイツ戦は見られなかったが、ドイツ代表を応援していた。私にとっては、ドイツ代表が必死に守り、その必死さが心に響けばそれで満足だった。

 監督がクリンスマン監督になっても、2004年まではドイツ代表を応援していた。GKがローテーション制になっても、その時は競争してお互いに自分を高めていくのならいいかなと思っていた。

 ドイツ代表を応援する気がなくなってきたのは、2005年の3月からだ。クリンスマン監督が、「日本とはやりたくない」といって2005年の10月に行われる予定だったドイツvs日本を、日本に断りもなく、ドイツvs中国に変え、公式サイトに載せたあと、日本サッカー協会に紙切れ1枚で断ってきたことをニュースサイトで知ったとき、私は非常に腹が立った。選手が決めたわけではない、と思っても、そのやり方が気に食わなかった。他の国とやりたかったら、理由を言ってキャンセルしてから、別の国と試合を組むのが礼儀ではないかと思う。

 ドイツでのコンフェデ杯は、地上波で、ドイツ対オーストラリア、ドイツ対ブラジル、ドイツ対メキシコを観た。これらの試合を通して、クリンスマン監督の目標とするサッカーは「攻撃サッカー」で、「攻撃は最大の防御なり」を実行したいんだと思った。それまで、ドイツサッカーと言えば、守備が固く、1点を守りきるというイメージをあり、「何としても守りきるぞ」、という意志が伝わってくるのがよいところだと思っていた。悪く言えば、退屈なサッカーと言えるかもしれない。クリンスマン監督は、そんなドイツサッカーを180度変え、楽しいサッカーを目指し、事実、コンフェデ杯では監督の思い通りうまくいった。しかし、守備がザルになった、と私は感じた。ドイツ対オーストラリアでは、試合終了間際、オーストラリアのアロイージがゴールに向かっているとき、ゴール前ではドイツの選手がたくさんいたのに、彼らはただ立っているだけで、彼の突撃を許し、ゴールさせてしまっていた。テレビでも解説者が、「これはいけませんねえ」と言っていた気がする。ドイツ対メキシコでは、守備で中途半端なボールの処理をしたため、あっという間にメキシコ側にボールを奪われ、あっという間にメキシコの選手は、ボールをネットにたたきこんだ。(その直後、Olliは猛烈に怒り、何か怒鳴りつけていた。)

 このコンフェデ杯では、ドイツ選手は面白いほどにゴールを決めていたので、失点が多かったのもドイツ国内では特に問題にしていなかったと思う。ただ、Olliが今の状態はKamikazeなので、守備もしっかりするべきだ、と警告していた。(Kamikazeとは、おそらく、突撃に行って、戻ってこないという意味だと思う。)しかし、クリンスマン監督は気にもとめていなかったようだった。クリンスマン監督の目指すサッカーと、Olliの目指すサッカーは正反対だった。コンフェデ杯のドイツ代表から、必死さが私には感じられなかった。つまり、魂をゆさぶるものがなかった。ドイツ対ブラジルでは、アドリアーノが3点目を入れたあと、ドイツ側はあきらめたようなプレーをしているような感じがした。最後の最後まであきらめずに頑張るところがなくなってしまった。ドイツ対オーストラリアでは、試合終了間際にオーストラリアに点を入れられても、「勝ったんだからまあいいか」、という雰囲気がOlliのまわりでは充満していた。Olliだけが顔から血を流しながら、何か叫んでいたように思える。私はそんなドイツ代表に興ざめして、応援するのをやめた。でもOlliがいたから、Olliの出ている試合は応援した。
 コンフェデ杯後の親善試合では、Olliの出ている試合は勝ってほしいと願い、Olliの出ていない試合は結果がどうなろうとしったことではない、という態度になっていった。コンフェデ杯で、「ドイツの守備は昔と違って穴だらけだから、恐れずに攻めても大丈夫ですよ」と世界中に知らせてしまった、と思った。案の定、守備の穴をつかれてドイツ代表はあたふたすることが多くなった。また、相手の国ががちがちに守備を固めてしまうと、それを突破することができずにうろうろする、つまり、アイディアがない、と感じた。守備について何度も何度も問題点を指摘されているのに、同じ事を繰り返す。学習能力がないのかと、私は怒ったこともあったが、監督自身が守備に対してアイディアがないので指導できないのではないかと思うようになった。私には監督がフートを頑固に使い続けるのに対して理解に苦しむ。フートは体はでっかいが、動作が鈍いという印象を受ける。事実、俊足の選手と競り合うと、振り切られている。フートがピッチに立つと、私はイライラした。

ドイツvsイタリアの結果とその内容を知ったとき、私は驚かなかった。ドイツ代表の問題点がすべてさらけ出されたと思った。守れない、攻められない、アイディアがない、根気がない。挙句の果てには、イタリアのメディアによって、ドイツ代表の問題点とそれに対してのできる限りの解決方法を指摘される有様だった。呆れたのは、次のアメリカ戦である。このときのアメリカは、怪我や、クラブの関係でドノバンなどのアメリカ代表のトップクラスの選手を集めることができなかった。1.5軍といったところだろうか。そんなアメリカ代表に対して、4対1でドイツは勝った。そしたら、もう何も問題はない、と言わんばかりの態度だった。どのように問題点を修正したのか、その説明がなかったように思う。問題点を実践を通して、直していくことでチームとして強くなっていくのではないだろうか。勝てば無敵だ、負ければこの世の終わりだ、という結果だけで判断する風潮はよくないのではないか。

 正GKについてのクリンスマン監督の発表は私にはあまり驚くものではなかった。やっぱりね、という感じである。このニュースについては半分残念だと思うと同時に、半分ほっとした。半分残念だと思うのは、Olliのワールドカップにかける思いを知っているため、正GKとしてピッチに立たせてあげたかったなあということである。でも、今のドイツ代表の守備を考えると、「これじゃあ、誰が正GKになってもなあ」と私は思っている。はっきりいって、ドイツ代表は地元での声援もあって、グループリーグは突破するだろうが、ベスト16か、ベスト8で終わるのではないかと思っている。グループBはおそらく、イングランドとスウェーデンが勝ち残るだろう。どちらとも手ごわいと思う。グループDはおそらく、ポルトガルとメキシコだと思う。グループCについては予想できない。でもどこも強敵だ。ワールドカップ2006では、どこでも攻撃的にくるだろう。だから守備もしっかりしているチームが勝ち残っていくと思う。攻撃と守備のバランスがうまくできているチームが優勝するのではないだろうか。もちろん、グループリーグから手を抜かずに必死にプレイすることも条件である。今は、昔と違って、伝統国以外の国でも、あらゆる国でプレイしていることもあって、差がなくなってきていると思う。また、コンピュータの発達で、相手国の分析も細かくできるので、どの国でも対策が立てやすくなっている。Olliはワールドカップ2002の後、「次は優勝を目指す」と言っていたが、仮にOlliが正GKとしても、優勝どころか、ワールドカップ2002よりも結果がよくない状態で終わってしまう可能性が大と思う。それなら、ワールドカップ2002ではベスト8で終わるはずだったのが、Olliのおかげで決勝戦までいけた、と考える方がいいのではないか、と私は今では思う。ワールドカップ2002のベスト8で、ドイツはアメリカと対戦した。このときの試合のOlliのすごさは忘れられない。この試合ではアメリカが優勢だった。ドイツが負けてもおかしくなかった。こんなにGKが注目された試合はなかったのではないか。ワールドカップ2002は、GKの重要性が認識された大会だった。でも、ワールドカップ2006では、守備の重要性が認識される大会になるのではないかと思う。つまり、攻撃=積極的、守備=消極的ではない。攻撃に結びつける守備のあり方が注目されると思う。

 クリンスマン監督は就任から攻撃的サッカーを目指していた。それに対してOlliは、まず守備をしっかりしなければならない、という考えを持っているように思える。ワールドカップ2002で、Olliはメツェルダーをよく指導していたように思う。メツェルダーは賢い青年で、Olliは彼に期待していた。メツェルダーが怪我をして長いこと、休むことがなかったら、ドイツ代表の守備はもっと安定したものになっていたのかもしれない。それに対してフートは、Olliにとっては理解不可能な人間だろう。Olliはぎりぎりまで待つタイプで、レーマンはすぐ前に飛び出すタイプである。クリンスマン監督は、前へ、前へというタイプを好むようだ。おそらく、レーマンの方が自分のタイプにあっていると思っていたに違いない。レーマンを正GKに決めた後、ケプケGKコーチが言った、"Lehmann passt besser zu unserer Spielphilosophie."(レーマンの方が我々の哲学に合っている)が端的に表していると思う。

 Olliは第2GKとして、ワールドカップに参加することを表明した。それでいいのだと思う。
クリンスマン監督がOlliを第2GKと決めたからといって、私たちがOlliを第2GKと見なす必要はない。私にとっては、OlliがNo.1 Goal Keeperである。なぜなら、Olliのおかげで、ゴールキーパーに対しての見方が変わったからである。恥ずかしいことだが、Olliを知るまでは、私はゴールキーパーは、フィールドプレーヤーとして才能が劣っている人がなるポジションだと思っていた。そしてゴールキーパーは、面白くないポジションだとも思っていた。Olliは、そんな見方を180度変えた人である。違った面から物事を見る。それをプレイを通して教えてくれたのがOlliである。クリンスマン監督はOlliを、試合で出す順序を2番目と決めたのであって、能力が2番目と決めたわけではない。

 しかし、この監督は、ドイツ対日本戦のキャンセルの仕方といい、ヴェアンスへのメール1本での戦力外宣告の仕方といい、Olliへの第2GKとしての通告の仕方といい、断り方が武骨すぎてヘタだ。人間関係でたくさんの敵を作りそうだ。もっと、断り方の技術を学んでこい、と言いたい。

>落選通告は、わずか30秒ほどでされたという。7日午前、クリンスマン監督がカーン
>に電話し、ミュンヘン中央駅に近いホテルの会議室に呼び出した。代表チームのビ
>アホフ統括部長、ケプケGKコーチ、レーベ・コーチとともに座っていた同監督はいき
>なり「正GKはイエンス(レーマン)に決まった」と告げた。カーンは「ダンケ(ありがと
>う)」と潔く答え、全員と握手して退室したという。
http://www.nikkansports.com/soccer/p-sc-tp0-20060411-17585.html

 この記事が本当なら、Olliもあっさりしすぎる。クリンスマン監督の就任からレーマンを第1GKにするという結論を感じていたんじゃないだろうか。この監督は初めから結論ありき、で行動しているようだ。正GKにレーマンを選んだ理由として、いろいろ言うが、後から作った理由みたいで私にはしらじらしい。

 Olliの青写真は、ワールドカップ2002以降、若手が順調に伸び、充実した状態でワールドカップ2006を迎え、自分もNo.1GKとして、0点に抑え、優勝し、代表を引退することだったと思う。しかし、今、ワールドカップ2006後に代表を引退するかどうか、はっきり表明していない。Olliは、現在のドイツ代表は守備に問題があるので、優勝は難しいと心の奥底で思っているのではないだろうか。第2GKとして受け入れたのも、そんな背景があるからかもしれない。

 私は今度のワールドカップでは、できるだけいろいろな国の試合を観てみたいと思っている。自分の心に訴えるチームに出会ったら、そのチームをずっと応援していくかもしれない。
(20060410/つばさ様)